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太陽光パネルの赤外線点検|ホットスポットの原因と熱画像での見つけ方

太陽光パネルのホットスポットはなぜ起きるのか。セル割れ・影や汚れ・バイパスダイオード・ストリング停止など、熱画像に出る典型パターンの「形」の違いを図解で並べ、日射600W/m²以上・発電中・反射を避ける角度といった撮影条件、ドローン点検の流れ、オルソでアレイ全体を俯瞰する意味、報告書のまとめ方まで、IEC TS 62446-3 や業界ガイドラインを出典に解説します。

太陽光発電赤外線調査ドローン点検

この記事の要点

  • ホットスポットは「発電できないセルが、ほかのセルの電流を通されて熱を出す」現象。影・汚れ・セル割れ・バイパスダイオードの異常などが引き金になる
  • 熱画像は「温まった範囲の形」で読む。1セル・影の形・1/3・モジュール全体・連続した複数枚・まだら、のどれかで原因の当たりが変わる
  • 撮影条件で結果が決まる。モジュール面の日射 600 W/m² 以上、発電中、天候が安定、太陽や空の映り込みを避ける角度
  • アレイ全体を1枚で俯瞰すると、位置と広がりが分かる。ストリング単位の異常は、写真1枚ずつでは見落としやすい

太陽光アレイを赤外線で俯瞰したイメージ図。正常なモジュールが紫に並ぶなか、1セルだけ明るい点、1/3が帯状に温かいモジュール、まとめて温かい4枚の列などが水色の枠で囲まれている

上図は説明用のイメージ(実写ではありません)。

「発電量が、なんとなく去年より少ない気がする」。太陽光発電所の管理では、よく聞く話です。

ところが現場に行っても、パネルはどれも同じ顔をして並んでいます。数百枚、数千枚のなかから「どれが悪いのか」を目で探すのは、ほぼ不可能です。

そこで使われるのが赤外線カメラ(サーモグラフィ)です。発電に参加できていない部分は、熱として正直に姿を現します。この記事では、その「熱の出方」を読み解くための考え方を、図解でまとめます。

ホットスポットとは? なぜ1枚のセルだけが熱くなるのか

太陽光モジュールの中では、たくさんのセルが直列につながっています。直列回路では、全員が同じ電流を流さなければなりません。

ここで1枚のセルに影が落ちたり、割れて発電できなくなったりすると、困ったことが起きます。そのセルは自分では電流を作れないのに、ほかのセルが作った電流を無理やり通されるのです。このときセルは逆向きの電圧を受けて抵抗のように振る舞い、電力を熱に変えてしまいます。これがホットスポットです。

A. 影のかかった1セルが熱くなるB. ダイオードが迂回させると1/3が温かい影 → 発熱バイパスダイオード影のセルは発電できないのに、直列のほかのセルの電流を通される。抵抗になって熱を出す(ホットスポット)電流がダイオード側へ迂回し、このクラスタは発電を止める。受けた日射が熱に変わり、1/3がまとめて温かく写る

この発熱を逃がすために、多くのモジュールにはクラスタ(セルのまとまり)ごとにバイパスダイオードが付いています。一般的な60セルのモジュールなら3クラスタ構成で、ダイオードが働くと電流はそのクラスタを迂回します。

迂回されたクラスタは発電を止め、受けた日射がそのまま熱になります。結果として、モジュールの1/3がまとめて温かく写ります。原因が影なら影が消えれば戻りますが、ダイオードそのものが短絡故障していると、晴れていても1/3が発電しないままになります。

ホットスポットは発電量を下げるだけではありません。局所的な高温が続くと、バックシートの変色・焦げなどの劣化を進めることがあります。赤外線点検の国際的な技術仕様 IEC TS 62446-3 も、その目的に火災安全のための予防保全を挙げています。

熱画像は「形」で読む: 6つの典型パターン

赤外線で見つかる異常は、どこがどのくらいの範囲で温まっているかで、ある程度の当たりが付けられます。よく出会うパターンを並べると次のとおりです。

① 1セルだけ熱いセル割れ・はんだ不良落ち葉や鳥のフンの直下② 影・汚れの形どおり下端の泥だまり・草の影汚れが形を作っている③ 1/3がまとめて温かい1/3バイパスダイオードの動作(または短絡故障)④ モジュール全体が温かい発電に参加していない(未接続・開放など)⑤ 何枚も続けて温かいストリング単位で停止(ヒューズ・接続・PCS側)⑥ まだら(パッチワーク)セルの劣化が散らばる枠寄りに多いとPIDを疑う正常やや高い高い
パターン温まる範囲まず疑うこと
① 1セルだけ熱いセル1枚(または一部)セル割れ・はんだ接合の不良、真上に乗った落ち葉や鳥のフン
② 影・汚れの形どおり汚れや影の輪郭に沿うモジュール下端の泥だまり、伸びた草や構造物の影
③ 1/3がまとめて温かいクラスタ1つぶんバイパスダイオードの動作、またはダイオードの短絡故障
④ モジュール全体が温かいモジュール1枚発電に参加していない(未接続・開放など)
⑤ 何枚も続けて温かいストリング単位ヒューズ・接続箱・配線・パワーコンディショナ側の停止
⑥ まだら(パッチワーク)セルが不規則に散らばるセルの劣化。枠寄りに多いと PID(電圧誘起劣化)を疑う

②の汚れは「掃除すれば治る」異常ですが、放っておくと①と同じ理屈でセルを傷めます。①と②は、まず目視で汚れや異物がないかを確かめるのが近道です。

見間違えやすい「正常な温度ムラ」

熱画像には、異常ではない温度差も写ります。日本電機工業会(JEMA)と太陽光発電協会(JPEA)の保守点検ガイドラインは、次のような平常の温度ばらつきを先に把握しておくよう求めています。

  • 端子箱の近くは熱が逃げにくく、ほかより温かくなりやすい
  • モジュールの端部・ラベル・枠の直近・架台の取付け部には温度こう配が出やすい

また同ガイドラインは、アレイの温度は日射・風速・気温で日ごとに大きく変わるため、絶対温度の基準はあまり役に立たず、周囲との温度差が最も重要だとしています。「何℃以上が異常」ではなく、「隣と比べて何℃高いか」で見るのが基本です。

熱画像だけで原因を断定することはできません。ガイドラインでも、温度差を見つけたら位置を記録し、目視検査と電気試験(ストリング・モジュール単位)で調べることが求められています。I-V カーブを正常なモジュールと比べるのも有効な手段です。

いつ・どう撮るか: 撮影条件で結果が決まる

赤外線点検は、撮る前にほぼ勝負が決まります。条件が悪いと、異常があっても温度差として現れないからです。

正反射✕ 太陽が映り込む○ 反射を外した角度✕ 斜めすぎ空が映り込む撮影前のチェック日射 600 W/m² 以上モジュール面で測る発電中であることPCS が通常運転(MPPT)天候が安定している雲の通過・突風を避けるパネル面で 1画素 3 cm 以下セルの中が見分けられる細かさ結露・汚れ・影がない撮影者や機体の影も含む

日射は 600 W/m² 以上、発電中に撮る

IEC TS 62446-3 では、モジュール面の日射強度 600 W/m² 以上がモジュール点検の最低条件とされています。ストリングの停止や PID のような異常は温度差が小さく、その差はおおむね日射に比例します。日射が弱いと、そもそも見えません。

もう一つの前提が、システムが通常どおり発電していることです。JEMA/JPEA のガイドラインは、パワーコンディショナが最大電力点追従(MPPT)で運転している平常の動作状態で、安定した天候のもとで撮るよう求めています。

温度は電気よりゆっくり変化します。雲が流れて日射が上下している最中は、熱画像が追いつきません。天候が少なくとも15分ほど変わらない状態で撮るのが広く推奨されています。

実例: 条件が合わない日の熱画像

下の画像は、実際の野立ての太陽光発電設備を3月の夕方にドローンで撮り、赤外線オルソにしたものの一部です(パネルの列だけを切り出しています)。

3月の夕方に撮った太陽光パネル列の赤外線オルソ。パネル面は紫から黒で冷たく、パネルの継ぎ目の格子だけが明るく写っている。ホットスポットは見当たらない

実写(CRITIR で作成した赤外線オルソの一部。表示範囲 −7〜2℃)

パネル面はおよそ −4℃ 前後で、周りの地面より冷たく写っています。日射が弱く発電による発熱がほとんど無いうえ、ガラス面が冷たい空を映し込んでいるためです。目立つのはパネルの継ぎ目の格子と、空の映り込みが作る暗い帯だけで、この条件ではホットスポットを探すことはできません。

同じアレイでも、日射が十分にあって発電している時間に撮れば見え方はまったく変わります。熱画像を見る前に、まず「いつ撮ったか」を確かめる習慣をつけましょう。

太陽や空の映り込みを避ける

モジュールの表面はガラスです。ガラスは赤外線でも鏡のように周りを映すため、太陽の正反射が入る角度で撮ると、その部分が異常のように明るく写ります。

逆に、角度を寝かせすぎると、今度は冷たい空を映して温度が低めに出ます。正反射の方向を外した、なるべく正面寄りの角度を選ぶのが基本です。ドローンなら、飛行の向きやカメラの角度を少し変えるだけで映り込みを避けられることがよくあります。

JEMA/JPEA のガイドラインには、裏面から撮るとガラスの反射の影響は最小になるが、表面から撮るほうがガラスの熱伝導で判別しやすい画像になるのが一般的という注記があります。正面から撮るときは、撮影者や機体の影をモジュールに落とさないことも求められています。

解像度は「セルの中が見えるか」で考える

1セルだけのホットスポットを見つけるには、セルの中に何画素も入る細かさが必要です。IEC TS 62446-3 の考え方では、モジュール面の上で1画素が最大 3 cm に収まる細かさが目安です。パネルは傾いているので、地面で測った解像度(GSD)ではなく、パネル面の上で何cmになるかで考えるのがポイントです。

飛行高度を上げれば一度に広く撮れますが、そのぶん画素は粗くなります。「早く撮り終えたい」と「小さな異常を見逃したくない」の釣り合いを、事前に決めておくことが大切です。

ドローン点検の流れ

規模の大きな発電所ほど、ドローンによる赤外線点検が効いてきます。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 事前準備: アレイ配置図・ストリング構成を手に入れ、飛行ルートと高度(=解像度)を決める。飛行は航空法などの関連法令に従う
  2. 当日の確認: 日射計でモジュール面の日射を測り、発電が平常であることを確かめる。気温・風・雲も記録する
  3. 撮影: 反射を避ける向きで、アレイ全体を重なりを持たせて撮る
  4. 解析: 温度が周囲より高い箇所を拾い、温度差を測り、パターンから原因の当たりを付ける
  5. 位置の特定: 異常が「どの列の何枚目か」を配置図の上で特定する
  6. 現地確認と報告: 目視や電気試験で確かめ、報告書にまとめる

このなかで手間がかかりやすいのが、4と5です。数百枚の写真を1枚ずつ見ていくと、同じモジュールを何度も見たり、写真の境目で異常を見落としたりしがちです。

なぜオルソで「アレイ全体」を俯瞰するのか

ここで役に立つのがオルソ画像です。たくさんの写真をつなぎ合わせ、真上(あるいは面の正面)から見た1枚の地図にしたものです。

オルソで見ると、次のことが一目で分かります。

  • 異常の広がり方: パターン⑤のストリング停止は、何枚も並んではじめて「列で温かい」と分かる。写真1枚の中では、ただの温かいモジュールに見えることがある
  • 位置: 「北から3列目、西から12枚目」のように、アレイの中での場所をそのまま数えられる。ガイドラインが求める配置図上での位置の記録にも直結する
  • 数の把握: 同じ異常を二重に数えたり、写真の境目で取りこぼしたりしにくい

オルソの作り方そのものは壁面オルソ画像の自動生成の記事で詳しく解説しています。地面に並ぶアレイでも考え方は同じです。

報告書には何を書くか

赤外線点検の報告書は、あとから同じ条件を再現できるかが要です。IEC TS 62446-3 も、測定機器・環境条件・点検方法・報告内容を規定の対象にしています。一般的には次の項目をそろえます。

  • 撮影条件: 日時、モジュール面の日射、気温、風、雲の状況、使用したカメラ
  • 異常ごとの記録: 位置(配置図・オルソ上)、熱画像と可視画像、周囲との温度差、パターンと推定原因
  • 判断と対応: 清掃・部品交換・追加の電気試験など、次に何をするか

温度差の数値と位置が並んでいれば、次回の点検で「去年より広がったか」を比べることもできます。

CRITIR でできること

CRITIR は、赤外線画像の解析から報告書までを1つのアプリで行う点検ソフトです。太陽光パネルの点検では、次の部分で使えます。

温度ムラを見つけやすくする: 表示する温度範囲を対象に合わせて詰めたり、アラームで「指定した温度以上」だけを色で浮かび上がらせたりできます。

アラームで指定温度以上の範囲だけを色表示した赤外線画像
アラームで、指定した温度以上の範囲だけを色で表示した例(画面は外壁の例です)

囲んで測り、記録する: ボックスやポリゴンで囲むと、範囲の最高・最低・平均温度などが出て、そのまま種別・判定・所見を付けた点検結果になります。種別の選択肢は点検入力設定で増やせるので、「ホットスポット」「クラスタ」のような太陽光向けの分類も作れます。

温度の高い範囲をポリゴンで囲んだ測定と点検結果パネル
温度の高い範囲を囲むと、温度範囲・面積・種別・判定が右の点検結果に並びます(画面は外壁の例です)

アレイ全体をオルソにする: 3Dモデルオルソは、太陽光パネルのシーンのように平面1枚では表しにくい対象にも向いています。3Dモデルの上で、オルソにしたい面と範囲を箱で指定します。

3Dモデルの上でオルソにする面と範囲を箱で指定する画面
3Dモデルの上で、オルソにする面(オレンジ)と範囲を箱で指定します(画面は松本城の例です)

報告書にまとめる: テンプレートを選ぶと、測定結果を反映した報告書が組み上がり、PDF・Word などで出力できます。

それぞれの操作は、ドキュメントの赤外線画像解析・測定ツール・オルソ生成・レポート作成の章で解説しています。対応機種や料金は CRITIR 製品ページ をご覧ください。

よくある質問

太陽光パネルのホットスポットとは何ですか?
モジュールの一部が周囲より局所的に高温になる状態です。直列につながったセルのうち1枚が影・汚れ・割れなどで発電できなくなると、ほかのセルが作った電流を通されて抵抗のように熱を出します。赤外線カメラ(サーモグラフィ)で撮ると、その部分だけが明るく写ります。
ホットスポットの原因は熱画像で見分けられますか?
温まっている範囲の大きさと形で、ある程度の当たりは付けられます。1セルだけならセル割れや局所の汚れ、モジュールの1/3がまとめて温かいならバイパスダイオードの動作や故障、モジュール全体や連続した複数枚なら未接続やストリング単位の停止が疑われます。ただし熱画像だけで原因を確定することはできず、目視確認や I-V カーブ測定などの電気的な試験と組み合わせて判断します。
太陽光パネルの赤外線点検はどんな条件で撮影すればよいですか?
IEC TS 62446-3 では、モジュール面の日射強度が 600 W/m² 以上であることが最低条件とされています。あわせて、システムが通常どおり発電している(パワーコンディショナが最大電力点追従で運転している)こと、雲の通過などで天候が変わらない安定した状態であること、ガラスへの太陽や空の映り込みを避ける角度で撮ることが大切です。
ドローンで太陽光パネルを点検するメリットは何ですか?
広いアレイを短時間で、同じ条件のうちに撮り切れることです。地上から1枚ずつ見て回るのに比べて、ストリング単位の停止のように複数のモジュールにまたがる異常にも気づきやすくなります。撮影した画像からオルソ画像を作れば、どの列の何枚目かという位置の特定や報告書の作成もしやすくなります。ドローンの飛行は航空法などの関連法令に従う必要があります。

まとめ

太陽光パネルの赤外線点検は、発電できていない場所が熱として現れることを利用した検査です。

  • ホットスポットは、発電できないセルがほかのセルの電流を通されて熱を出す現象
  • 熱画像は形で読む。1セル・影の形・1/3・1枚・連続・まだらで、疑う原因が変わる
  • 見るべきは絶対温度ではなく周囲との温度差。端子箱や枠まわりの平常のムラと見分ける
  • 撮影条件(600 W/m² 以上・発電中・安定した天候・反射を避ける角度・十分な解像度)が結果を決める
  • オルソでアレイ全体を俯瞰すると、異常の広がりと位置がそのまま分かる

点検の計画や解析でお困りのことがあれば、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

出典


公開日: 2026年10月7日 / 最終更新日: 2026年10月7日

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