オルソ画像とは?写真との違いを図で解説 ─ 地図の航空写真から、建物の壁面まで
オルソ画像(正射投影画像)とは何か、ふつうの写真と何が違うのかを図解で解説します。高い建物が外側へ倒れて写る「倒れ込み」、トゥルーオルソとの違い、オルソができるまでの4ステップ、地図の航空写真と建物の立面オルソの違い、うまく作れない条件まで、松本城や擁壁の実例とともに紹介します。
この記事の要点
- オルソ画像は「平行な光で写し直した写真」。ふつうの写真(中心投影)にある遠近のゆがみと、高さによる位置のずれを取り除き、どこでも縮尺がそろった画像にしたもの
- 写真では、高いものほど外側へ倒れて写る。この「倒れ込み」まで消したものがトゥルーオルソ
- 作り方は4ステップ。写真 → 撮影位置と向き → 表面の形 → 貼り直し
- 地図のオルソは真下へ、建物の立面オルソは壁へ水平に写す。原理は同じで、向きと基準の面だけが違う
- 得意・不得意がある。重なり不足、無地の面、反射、動くものは苦手

左はドローンで撮った松本城の写真、右は同じ面のオルソ画像です。左では石垣が手前に大きく張り出し、屋根の上面も見えています。右では屋根は横一線に並び、天守と小天守の高さの比がそのまま読み取れます。同じ建物なのに、なぜこんなに違うのでしょうか。
「地図の航空写真」は、ただの写真ではない
地図アプリで航空写真に切り替えると、道路の線と写真がきれいに重なります。当たり前のように見えますが、実はふつうの写真を並べただけでは、こうはなりません。
国土地理院は、オルソ画像を次のように説明しています。
写真上の像の位置ズレをなくし空中写真を地図と同じく、真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換したもの
裏を返すと、ふつうの空中写真には「位置ズレ」があり、そのままでは地図と重ならないということです。国土地理院はこの変換をかけた空中写真を「電子国土基本図(オルソ画像)」として整備しています。
では、その位置ズレはどこから来るのでしょうか。
写真は、光が「1点に集まって」できている
カメラは、景色のあちこちから来た光をレンズの1点に集めて像を作ります。これを中心投影と呼びます。
光が1点に集まる以上、カメラに近いものは大きく、遠いものは小さく写ります。斜めから撮った壁が台形になるのはこのためです。上の図の左側では、等間隔の4区画が、写真の中では手前ほど広く、奥ほど狭く写っています。
オルソ画像は、これを壁や地面に垂直な、平行の光で写したかのように描き直した画像です(正射投影)。図の右側のように、どの区画も同じ幅で写ります。1枚の中で縮尺が場所によって変わらない、というのがオルソ画像のいちばん大事な性質です。
高いビルは、外側へ倒れて写る(倒れ込み)
中心投影には、もう一つやっかいな性質があります。真上から撮っても、高いものは写真の中心から外側へ倒れたように写るのです。
屋上から出た光は、カメラに向かって斜めに進みます。その光の向きのまま地面まで延ばしてみると、建物の足元よりも外側に着きます。写真の上では、地面のその位置に屋上があるかのように写るわけです。
このずれは、写真の中心から遠いほど、そして建物が高いほど大きくなります。国土地理院の説明でも、対象物が地面から高いほど、また写真の中心から周縁部に向かうほど位置ズレが大きくなるとされています。
ざっくり計算してみる
真下へ向けたカメラで、地上 100 m から撮ったとします。写真の中心の真下から 30 m 離れた場所に高さ 10 m の建物があると、屋上は足元より約 3.3 m 外側に写ります(30 × 10 ÷ (100 − 10))。同じ建物が中心の真下にあれば、ずれはほぼ 0 です。ドローンのように低く飛ぶほど、同じ高さの建物でも倒れ込みは大きくなります。
図をよく見ると、もう一つ大事なことが分かります。倒れた建物の陰になった地面は、その写真には写っていません。この「見えない地面」が、次に出てくるトゥルーオルソの話につながります。
「オルソ」と「トゥルーオルソ」は何が違う?
オルソ画像を作るときは、写真の各画素を「地上のどこから来た光か」にさかのぼって並べ直します。このときどんな形の上に並べ直すかで、仕上がりが変わります。
- 通常のオルソ: 地面の起伏だけを表した標高データ(DEM・数値地形モデル)を使います。土地の起伏による位置ずれは取れますが、建物は「地面の一部」として扱われないので、屋上は外側へずれたまま、壁の側面も写ります
- トゥルーオルソ: 建物などの地物も含めた表面の形(DSM・数値表層モデル)を使います。屋上は屋上の高さで並べ直されるので、屋上が足元にぴったり重なります
ただし、トゥルーオルソにはもう一つ仕事があります。倒れ込みで隠れていた地面は、元の写真には写っていません。そこで、同じ場所を別の角度から写した写真から埋めます。そのぶん写真どうしの重なりを多くとる必要があり、アジア航測の技術報でも、トゥルーオルソは通常より高いラップ率(重複率)での撮影が必要だとされています。
同じ技術報によれば、トゥルーオルソは建物の倒れ込みがない(側面が見えない)写真地図になるため、建物や土地を正確に判読・計測したい固定資産評価などでの利用が期待されています。
オルソができるまで: 4つのステップ

オルソ画像は、たくさんの写真を「貼り直して」作ります。航空測量でもドローンでも、骨組みは同じです。
- 写真を撮る: 同じ場所が何枚もの写真に写るよう、重なりを持たせて撮ります
- 撮影位置と向きを割り出す: 写真どうしで共通する点を見つけ、1枚ごとに「どこから、どちらを向いて撮ったか」を逆算します。ドローン写真では SfM(Structure from Motion)と呼ばれる手法がよく使われます
- 表面の形を求める: 地面の起伏、建物を含む表面、あるいは壁を1枚の平面とみなすなど、「どの形の上に並べ直すか」を決めます
- 貼り直す: 表面上の各点について、それが写っている写真の画素を探して色を持ってきます。重なる部分は継ぎ目が目立たないように合成し、1枚にまとめます
ポイントは2番目です。撮影位置と向きが分かれば、写真の各画素が「どの方向から来た光か」が分かります。3番目の形と組み合わせれば、その光が表面のどこから来たかが決まります。オルソ画像は、この光の道筋を逆にたどる計算で作られているのです。
地図のオルソと、建物の「立面オルソ」
ここまでは地図の話でした。同じ原理は、建物の壁にも使えます。それが立面オルソ(壁面オルソ)です。
違いは、写す向きと基準にする面だけです。
| 地図のオルソ | 建物の立面オルソ | |
|---|---|---|
| 写す向き | 真下へ | 壁へ水平に |
| 基準の面 | 水平な地面 | 壁の面 |
| 画像の縦横 | 東西 × 南北 | 壁の幅 × 高さ |
| できあがるもの | 地図に重なる写真 | 立面図に重なる写真 |
地図のオルソでは「真下」は重力の向きで一つに決まります。ところが壁は、建物ごと、面ごとに向きが違います。そのため立面オルソでは、どの面に向かって写すのかを決める工程が欠かせません。
壁の凹凸も問題になります。庇やバルコニー、城の屋根のように壁から大きく張り出したものは、壁を1枚の平面とみなして写すと、本来の位置からずれて写ります。地図でいえば、DEM で補正した通常のオルソで建物が倒れて写るのと同じ理屈です。凹凸の大きい対象では、3Dモデル(表面の形)を使って写し直すことで、張り出しも正しい位置に並びます。

擁壁のように横に長い対象は、1枚の写真には収まりません。オルソにすると、端から端まで同じ縮尺で1枚に並べられます。
オルソがあると、何が嬉しいのか
1. 寸法がそろう
どこでも縮尺が同じなので、画像の上で長さや面積をそのまま比べられます。写真の上では、手前のひび割れと奥のひび割れの長さを、見た目の大きさで正しく比べることはできません。
ただし、縮尺が「そろう」ことと、それが「何メートルか分かる」ことは別の話です。実寸にするには、GPS 付きの撮影位置や、現地で測った既知の長さを使って縮尺を与えます(スケール設定の考え方)。
2. 図面と重なる
地図のオルソが地図と重なるように、立面オルソは立面図と重なります。劣化の位置を図面に写し取る、数量を拾う、といった作業がやりやすくなります。
3. 全体を一望できる
壁一面の状態を、1枚で見渡せます。何十枚もの写真を1枚ずつめくる代わりに、「どこに、どれだけ」をひと目で把握できます。


可視画像と同時に赤外線(サーモグラフィ)画像も撮っていれば、温度の分布も同じ形のオルソにできます。外壁点検では、タイルの浮きなどによる温度ムラが壁のどこにあるかを、壁全体の中で確認できます。
オルソがうまく作れない5つの条件
オルソは万能ではありません。仕組みが「写真どうしで同じ点を見つける」ことに支えられている以上、それが難しい場面は苦手です。
- 重なりが足りない: 同じ場所が複数の写真に写っていないと、撮影位置と向きが求まりません。写真測量ソフト Pix4D は、一般的な対象で進行方向に75%以上、隣のコースと60%以上の重なりを推奨し、赤外線画像では前後・左右とも90%以上を推奨しています
- 無地で模様がない: 真っ白な壁や雪原、砂地のように模様のない面は、写真どうしで同じ点を見つける手がかりがありません。Pix4D も雪や砂を見た目の情報が乏しい対象として挙げ、重なりを増やすよう勧めています
- 反射する・透ける: 水面やガラス、光沢のある金属は、見る角度で写り込みが変わります。Pix4D は開けた水面の再構成はほぼ不可能だとしています
- 動いている: 車や人、風で揺れる木の枝は、写真ごとに位置が変わるため、継ぎ目で不自然になりがちです
- 基準の面から大きく外れている: 壁の手前にある木や電線は、壁の面に「貼り付いた」ように写ります。下の写真の木がその例です

撮る前にできること
撮影計画の段階で、重なりを多めにとる、無地の面では模様のある周囲(窓枠・目地・隣の壁)も一緒に写す、水面やガラスが画面の大半を占める構図を避ける。この3つだけでも、失敗はぐっと減ります。
建物の立面オルソを作るなら
ここまでの原理をふまえると、建物の壁でオルソを作るには「写真から撮影位置と向きを求める」「写す面を決める」「凹凸が大きければ3Dモデルを使う」という段取りが必要なことが分かります。
点検向けのソフト CRITIR(クリティア) では、ドローンや地上で撮った写真から、この一連の処理を自動で行えます。
- 平面オルソ: 壁や屋根を1枚の平面とみなして写します。写真から自動で見つけた候補の面を選ぶか、写真の上で面をクリックして指定します
- 3Dモデルオルソ: 3Dモデルを作り、その上でオルソにする面・範囲・奥行きを箱で指定します。凹凸の大きい建物や、1つの建物の複数の面を作るときに向いています
- 可視と赤外線: 可視オルソと赤外線オルソを同時に作れます
- 実寸: 既知の長さを2点で指定すると、オルソ・3Dモデル・元の写真の測定がまとめて実寸になります
具体的な作り方は、別の記事 立面・壁面オルソ画像を簡単に作る方法 と、ドキュメントの オルソ生成・オルソビューワー・スケール設定 で解説しています。CRITIR の全体像は 製品ページ をご覧ください。
よくある質問
- オルソ画像とオルソフォトは同じものですか?
- 同じものを指します。正射投影画像、正射写真とも呼ばれます。航空写真を使った地図用のものは「写真地図」と呼ばれることもあります。
- オルソ画像なら、どこを測っても正確ですか?
- 縮尺がそろうのは、基準にした面(地図なら地面、立面オルソなら壁)の上にあるものです。そこから大きく外れたもの(通常のオルソでの建物の屋上、立面オルソでの手前の木など)は、本来とは違う位置や大きさで写ります。また、実寸にするには GPS や既知の長さで縮尺を与える必要があります。
- トゥルーオルソのほうが常に良いのですか?
- 建物の倒れ込みが無いぶん正確ですが、建物を含む表面の形が必要になり、隠れた地面を埋めるためにより多くの重なりが必要です。目的と撮影の条件に合わせて選びます。
- ドローンの写真でもオルソ画像は作れますか?
- 作れます。重なりを持たせて撮った写真があれば、SfM で撮影位置と向きを割り出し、オルソ画像にできます。壁を対象にする場合は、壁へ向けて撮った写真から立面オルソを作ります。
まとめ
- ふつうの写真は中心投影。遠近でゆがみ、高いものは外側へ倒れて写る
- オルソ画像は、撮影位置と向き、表面の形を使って平行な光で写し直した画像。どこでも縮尺がそろう
- 建物の倒れ込みまで消したものがトゥルーオルソ。隠れた地面は別の写真で埋める
- 地図のオルソは真下へ、建物の立面オルソは壁へ水平に。違いは向きと基準の面だけ
- 重なり不足・無地・反射・動くもの・面から外れたものは苦手。撮影の段階で対策できる
出典
- 国土地理院「オルソ画像について」
- 国土地理院「電子国土基本図(オルソ画像)」
- アジア航測「トゥルーオルソによる写真地図作成の自動化への取組」(For the Future 2025 技術報)
- Pix4D「Image acquisition」
- Pix4D「Best practices for image acquisition and photogrammetry」

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