R-JPEG とは?ドローン赤外線画像の「中身」を図で解説 ─ 見た目の JPEG と温度データは別物
DJI のドローンで撮った赤外線画像(R-JPEG)は、普通の画像ソフトで開くとただの色付き写真です。1つのファイルに入っている「見た目の画像」「温度の元データ」「計算の材料」の3つを図解し、色から温度を戻せない理由、JPEG と温度データで解像度が違うことがある話、FLIR 形式との違い、DJI Thermal SDK と DJI Thermal Analysis Tool の位置づけ、High Res モードの注意点までまとめます。
この記事の要点
- R-JPEG は「見た目は JPEG、中身は温度データ入り」のファイル。1つのファイルに、色を付けた見た目の画像・画素ごとの温度の元データ・計算の材料(放射率など)の3つが入っている
- 普通の画像ソフトで開くと、見えるのは色の付いた写真だけ。しかも見た目の色から温度は戻せない。同じ色でも画像によって 10℃ 以上違うことがある
- JPEG と温度データで解像度が違うことがある。例えば Matrice 30T では JPEG が 1280×1024、温度データは 640×512
- 温度を読むには DJI Thermal SDK を使ったソフトが要る。計算の材料が残っているので、撮影後に放射率などを変えて計算し直すこともできる

「温度入りの JPEG」を開いてみたら、ただの写真だった
ドローンの赤外線点検を始めたばかりの頃、こんな経験はないでしょうか。
- 撮ってきた赤外線画像をパソコンのフォトビューワーで開いたら、虹色の写真が出てきた。でも、どこにも温度が書いていない
- 画像編集ソフトのスポイトで色を拾って、カラーバーと見比べて温度を読もうとした
- 調査会社に画像を渡したら「温度データが入っていない」と言われた
DJI の赤外線カメラが保存する R-JPEG は、拡張子こそ .JPG ですが、普通の写真とは中身が違います。上の図の左が、画像ソフトで開いたときに見える姿です。右は、そのうちの 7×5 画素に入っている温度を、DJI の公式 SDK で取り出して書き込んだものです。
見えている色と、裏に入っている温度は別のものです。この記事では、R-JPEG の中に何が入っているのか、なぜ色から温度を読んではいけないのかを、図でほどいていきます。
R-JPEG の中身 ─ 1つのファイルに3つのものが入っている
JPEG という形式には、画像そのものとは別に、カメラやソフトが独自の情報を書き込んでおける「付加情報の領域」があります。撮影日時や GPS の位置が入る Exif もその一つです。R-JPEG は、この仕組みを使って温度の情報を一緒に保存しています。
中身を3つに分けると、次のようになります。
- 見た目の画像: 撮影時に選んでいたパレットで色を付けた、ふつうの 8bit JPEG。フォトビューワーやブラウザが表示するのはこれだけ
- 温度の元データ: センサーが捉えた赤外線の量を、画素ごとに記録した生の値。Matrice 4T の仕様表では、写真の形式が「JPEG (8bit)」と「R-JPEG (16bit)」に書き分けられている
- 計算の材料: 生の値を温度に換算するための情報。放射率・反射温度・距離・湿度・気温といった撮影時の設定値などが含まれる
画像のメタデータを読む定番ツール ExifTool の資料でも、DJI の R-JPEG から対象までの距離・放射率・相対湿度・気温・反射温度といった項目が読み取れることが記載されています。
ポイントは、②と③があって初めて温度が計算できることです。①は人が見るための「絵」で、温度を測るための部分ではありません。
見た目の色から温度は戻せない
「パレットとカラーバーが分かっていれば、色から温度を逆算できるのでは?」と考えたくなります。実際の画像で試してみましょう。次の2枚は、同じ住宅を同じカメラ(DJI Mavic 3T)・同じパレットで撮った R-JPEG です。

丸印の箇所はどちらもほぼ同じピンク色です。ところが、温度データを読むと左は約 31℃、右は約 20℃。同じ色なのに 11℃ ほど違います。
原因は、色の割り当て方が画像ごとに変わることです。
- 表示範囲が画像ごとに違う: 多くの赤外線カメラは、写っている温度に合わせて色を割り当てる範囲を自動で決める。範囲が変われば、同じ色が指す温度も変わる
- 範囲の外は端の色に張り付く: 表示範囲より熱いもの・冷たいものは、どれだけ違っても同じ色になる
- 色の段階には限りがある: 8bit の色に落とした時点で、細かい温度差は丸められる
左の画像は空や影まで写っていて表示範囲が広く、右の画像は壁だけで範囲が狭い。だから同じピンクが別の温度を指しています。スクリーンショットや、色だけを残した画像から温度を「読む」ことは、正確には成り立ちません。
画像編集ソフトで R-JPEG を開いて保存し直したり、トリミングしたりすると、温度の元データや計算の材料が入った付加情報の領域が消えてしまうことがあります。見た目は同じでも、温度が読めないファイルになります。元のファイルは加工せずに保管し、作業はコピーで行いましょう。
JPEG の解像度と温度データの解像度は、同じとは限らない
もう一つ、見落としやすい落とし穴があります。見た目の JPEG と温度データの画素数が違うことがあるのです。
CRITIR開発チームの手元にある DJI Matrice 30T の画像では、見た目の JPEG が 1280×1024、DJI の公式 SDK で取り出した温度データは 640×512 でした。JPEG の縦横2×2画素に、温度データの1画素が対応しています。Matrice 4T の画像でも同じ組み合わせでした。
これは仕様どおりの動きです。DJI の Matrice 4T の公式仕様では、赤外線カメラの解像度は 640×512、超解像を有効にすると 1280×1024 とされています。見た目の画像は細かく作り直せても、センサーが実際に測った温度の画素は 640×512 のままです。
| 機種(例) | 見た目の JPEG | 温度データ |
|---|---|---|
| DJI Matrice 30T(手元の画像) | 1280×1024 | 640×512 |
| DJI Matrice 4T(手元の画像) | 1280×1024 | 640×512 |
| DJI Zenmuse H30T(手元の画像) | 1280×1024 | 1280×1024 |
| DJI Mavic 3T(手元の画像) | 640×512 | 640×512 |
この違いは、次のような場面で効いてきます。
- 画像ソフトやプログラムで画像の大きさを調べると、JPEG 側のサイズが返る。Python の画像ライブラリなどで R-JPEG を読み込んで座標を決めると、温度データとは縦横2倍ずれた位置を指すことになる
- 測りたい点の座標は、温度データの解像度に換算して読む必要がある。JPEG 上の (720, 320) は、温度データでは (360, 160)
- 小さな対象の温度は、見た目ほど細かくは測れていない。見た目の 2×2 画素が同じ温度の1画素を共有している
自作ツールで温度を扱うときは
温度データの大きさは、画像ファイルの大きさではなく、SDK が返す温度データ側の解像度で判断します。CRITIR でも、測定の位置は温度データの解像度の座標で記録し、見た目の画像に重ねるときに換算しています。
FLIR の放射測定 JPEG とは何が違う?
温度入りの JPEG は DJI だけのものではありません。FLIR のカメラも、温度を計算できる情報を JPEG の中に保存しています(放射測定 JPEG、radiometric JPEG)。広い意味ではどちらも「R-JPEG」です。
考え方は同じで、見た目の画像+生データ+計算の材料という3点セットです。違うのは、その入れ方と換算のしかたです。
| DJI の R-JPEG | FLIR の放射測定 JPEG | |
|---|---|---|
| 見た目の画像 | パレットで色付けした JPEG | パレットで色付けした JPEG |
| 温度の元データ | DJI 独自の形式で格納 | FLIR 独自の領域に生データとして格納 |
| 計算の材料 | 放射率・反射温度・距離・湿度・気温など | 放射率・反射温度・距離・湿度・気温に加え、カメラごとの換算係数(Planck 換算係数。PlanckR1・PlanckB など) |
| 温度を読む公式の手段 | DJI Thermal SDK・DJI Thermal Analysis Tool | FLIR の解析ソフト・SDK |
同じ「温度入り JPEG」でも、中の構造が違うので、FLIR 向けのソフトでは DJI の R-JPEG の温度を読めません(逆も同じです)。そのため、DJI の画像を FLIR 形式に変換してから FLIR 向けのソフトで解析する、という運用が広く行われてきました。この変換をせずに済ませる方法は、DJI赤外線画像は変換不要 ─ FLIR形式への変換不要で解析できるソフトで紹介しています。
DJI Thermal SDK と DJI Thermal Analysis Tool の位置づけ
DJI は、R-JPEG を読むための道具を2つ無料で公開しています。
- DJI Thermal SDK: ソフトウェア開発者向けの部品(ライブラリ)。Windows と Linux に対応し、自社のソフトで R-JPEG を処理して温度を測る機能を作れる。2025年12月11日公開の v1.8 が最新(執筆時点)
- DJI Thermal Analysis Tool 3: DJI 公式の無料の解析ソフト。画像を開いて重要な箇所の温度を確認できる。複数の画像の距離・湿度・放射率・反射温度をまとめて編集したり、レポートを一括で出力したりする機能もある。v3.6.0 が最新(執筆時点)
つまり、DJI の R-JPEG から温度を取り出す正規の入口は DJI Thermal SDK で、DJI Thermal Analysis Tool はそれを使った公式アプリ、という関係です。対応機種は SDK のバージョンで変わるので、新しい機種を使うときは DJI の公式ページで確認してください。
High Res モードの画像は「測る」ためのものではない
DJI の一部の赤外線カメラには、High Res(高解像度)モードがあります。注意したいのは、このモードが測温用ではないことです。
DJI は Zenmuse H30 シリーズの FAQ で、High Res モードを温度差の小さい対象をよりはっきり見せるための観察用のモードと説明し、このモードでは温度測定に対応していないと案内しています。点検で温度を記録したいなら、撮影前にモードを確認しておくのが確実です。
CRITIR では High Res モードの画像も開けますが、温度は参考値の表示となり、放射率などの測温パラメーターは変更できません。周りとの相対的な温度差を見比べる用途には使えます。
なぜ撮影後に温度を計算し直せるのか
R-JPEG に「計算の材料」が入っていることには、うれしい副作用があります。撮影後に放射率や反射温度を変えて、温度を計算し直せるのです。
焼き付けてあるのが温度の完成品ではなく「生の値+撮影時の設定」なので、対応ソフトで設定値を入れ替えれば、同じ生の値から新しい温度が計算されます。現場で反射温度を測り忘れた、外壁用の設定のまま金属部を撮ってしまった、といったときにも撮り直さずに済むことが多いのです。
放射率や反射温度そのものの意味、どう決めればよいかは、赤外線カメラの放射率・反射温度とは?で詳しく解説しています。
R-JPEG を扱うときのチェックリスト
- 写真の保存形式: 機種によっては仕様表に JPEG と R-JPEG の両方が並んでいます(例: Matrice 4T)。後から温度を測りたいなら R-JPEG で保存されているか確認
- 撮影モード: 温度を記録したい撮影では High Res モードを使わない
- 元ファイルを加工しない: 保存し直し・トリミングで温度の情報が消えることがある
- 解像度の違い: 自作ツールで座標を扱うなら、温度データ側の解像度で計算する
CRITIR で R-JPEG を読むと
赤外線画像解析ソフト CRITIR は、DJI の R-JPEG を変換なしで読み込み、温度データから画像を描き直して表示します。見た目の JPEG の色を使うのではなく温度から色を作るので、パレットや表示範囲を後から自由に変えられます。




同じ温度データでも、パレットを変えると見え方はこれだけ変わります。色はあくまで「見せ方」だということが、よく分かると思います。

- 温度は温度データの解像度で読み、見た目の画像に重ねて表示する。JPEG と温度データの解像度が違う機種でも位置がずれない
- 右パネルの測温パラメーターから、放射率・反射温度・距離・大気温度・相対湿度を変えて温度を計算し直せる
- DJI に加え、FLIR・HIKMICRO などの赤外線画像も同じ画面で扱える
表示の調整のしかたは 赤外線画像解析 に、読み込める機種の一覧は 対応カメラ にまとめています。
よくある質問
- R-JPEG とは何ですか?
- 温度の情報を持った JPEG 形式の赤外線画像です。DJI の赤外線カメラでは、パレットで色を付けた見た目の画像(8bit の JPEG)に加えて、画素ごとの温度の元データと、放射率・反射温度・距離・湿度・気温などの計算の材料が1つのファイルに入っています。見た目は普通の JPEG なので一般的な画像ソフトでも開けますが、そこで見えるのは色の付いた写真だけで、温度は対応ソフトでないと読み出せません。
- DJI の赤外線画像から温度データを取り出すにはどうすればよいですか?
- DJI が無料で公開している DJI Thermal Analysis Tool 3 で画像を開くか、開発者向けの DJI Thermal SDK を使うソフトで読み込みます。CRITIR のような対応ソフトなら、R-JPEG をそのまま読み込んで温度を測れます。画像の色から温度を逆算する方法は、パレットや表示範囲が画像ごとに違うため正確には成り立ちません。
- JPEG の解像度と温度データの解像度が違うのはなぜですか?
- 機種や設定によっては、見た目の画像だけをより高い解像度で保存するためです。例えば DJI Matrice 4T の公式仕様では、赤外線の解像度は 640×512、超解像を有効にすると 1280×1024 とされています。手元の Matrice 30T と Matrice 4T の画像でも、JPEG は 1280×1024、DJI Thermal SDK で取り出した温度データは 640×512 でした。この場合、JPEG 上の座標を縦横ともに半分にして温度データを読む必要があります。
- High Res モードで撮った画像でも温度を測れますか?
- DJI は、Zenmuse H30 シリーズの High Res モードを温度差の小さい対象を見やすくする観察用のモードとしており、このモードでは温度測定に対応していないと案内しています。温度を測る目的の撮影では、測温に対応したモードで撮影してください。CRITIR では High Res モードの画像も開けますが、温度は参考値の表示となり、放射率などの測温パラメーターは変更できません。
まとめ
- R-JPEG は見た目の画像・温度の元データ・計算の材料の3つを1つのファイルに収めた形式。画像ソフトで見えるのは1つ目だけ
- 色から温度は戻せない。表示範囲が画像ごとに違い、同じ色でも 10℃ 以上違うことがある
- JPEG と温度データの解像度は違うことがある(例: Matrice 30T は 1280×1024 と 640×512)。座標は温度データ側で扱う
- FLIR の放射測定 JPEG も考え方は同じだが、中の構造が違うので互いのソフトでは読めない
- 温度を読む正規の入口は DJI Thermal SDK。計算の材料が残っているので、撮影後に設定を変えて計算し直せる
- High Res モードは観察用で、温度測定には対応していない
DJI の R-JPEG を変換なしで読み込み、温度測定から壁面オルソ・報告書までを一つのソフトで行いたい方は、CRITIR 製品ページをご覧ください。
出典
- DJI Enterprise, Matrice 4 シリーズ 仕様 ── 赤外線カメラの解像度(640×512、超解像有効時 1280×1024)、写真フォーマット(JPEG (8bit)、R-JPEG (16bit)) ── enterprise.dji.com
- DJI Enterprise, Zenmuse H30 シリーズ FAQ ── High Res モードは観察用で温度測定に非対応、後処理に DJI Thermal Analysis Tool 3 を使えること ── enterprise.dji.com
- DJI Enterprise, Zenmuse H30 シリーズ 仕様 ── H30T の赤外線解像度 1280×1024、写真フォーマット R-JPEG ── enterprise.dji.com
- DJI Enterprise, Matrice 4 シリーズ ダウンロード ── DJI Thermal SDK v1.8・DJI Thermal Analysis Tool 3 v3.6.0(いずれも 2025年12月11日)、SDK が Windows / Linux 向けで R-JPEG の処理と測温の機能を作れること ── enterprise.dji.com
- DJI, DJI Thermal Analysis Tool 3 ダウンロードページとユーザーガイド ── 距離・湿度・放射率・反射温度の一括編集、レポートの一括出力 ── dji.com
- Phil Harvey, ExifTool Tag Names: DJI Tags ── DJI R-JPEG に含まれる距離・放射率・相対湿度・気温・反射温度などの項目 ── exiftool.org
- Phil Harvey, ExifTool Tag Names: FLIR Tags ── FLIR の JPEG に含まれる生の温度画像(RawThermalImage)、放射率・反射温度などの設定値、Planck 換算係数 ── exiftool.org
- 本文中の画像と表の解像度・温度の値は、CRITIR開発チームの手元の撮影データ(DJI Mavic 3T・Matrice 30T・Matrice 4T・Zenmuse H30T)を DJI Thermal SDK で読み出して確認したものです。
公開日: 2026年10月8日 / 最終更新日: 2026年10月8日

DJI赤外線画像は変換不要 ─ FLIR形式への変換不要で解析できるソフト「CRITIR」
DJI製ドローンで撮影したR-JPEGをFLIR形式に変換しなくても、そのまま高機能な温度解析・オルソ画像生成・報告書作成まで行えるソフトウェア「CRITIR(クリティア)」を紹介します。変換ツールや変換サービスにかかっていた時間・コストを削減できます。

赤外線カメラの放射率・反射温度とは?「温度が合わない」の正体と設定・補正のしかた
サーモグラフィの温度が接触温度計と合わない、窓や金属だけ極端に冷たく写る。その多くは故障ではなく放射率と反射温度の設定が原因です。カメラが実際に何を測っているのかを図解し、材料別の放射率一覧、アルミ箔を使った反射温度の測り方、距離・湿度の影響、金属とガラスが難しい理由、撮影後に設定し直す方法までまとめます。

点検用ドローンの赤外線カメラはどう選ぶ?解像度・画角・温度測定・データ形式で比べる
ドローン用赤外線カメラの選び方を図解します。640×512 と 1280×1024 の違いを「1画素が壁の上で何cmになるか」で比べる計算方法、温度を測れる(ラジオメトリック)カメラかどうか、R-JPEG などデータ形式の注意点、可視カメラとの組み合わせ、高解像度モードの扱いを整理し、Matrice 30T / Mavic 3T / Matrice 4T / Zenmuse H20T・H30T / Skydio X10 の公式仕様を並べて比較します。
