外壁赤外線調査はいつ撮る?方角別の最適な撮影時間を解説
外壁の赤外線調査は「いつ撮るか」で結果がほぼ決まります。浮き部の温度差が出る仕組み、面の向きごとに最適時刻がずれる理由、隣棟の影・山影という見落としがちな落とし穴を整理し、住所を入れるだけで面ごとの推奨時間帯が分かる無料ツール「CRITIR Thermal Planner」の使い方まで解説します。
この記事の要点
- 外壁赤外線調査の成否は「いつ撮るか」でほぼ決まる。浮き部の温度差は日射で作られるため、日射条件を外すと異常そのものが画像に現れない
- 最適時刻は面ごとに違う。東面と西面では半日ずれる。建物を一周する撮影を一つの時間帯で済ませることはできない
- 暦上の日照時間はあてにならない。都市部では隣棟の影、山間部では山影が実際の日照を大きく削る
- 出発前に決められる。CRITIR Thermal Planner(無料・登録不要)は住所を入れるだけで面ごとの推奨時間帯と撮影計画書を出力する

なぜ「いつ撮るか」で結果が変わるのか
外壁タイルの浮きを赤外線で捉えられるのは、浮いた部分の裏に空気層があるからです。空気は熱を伝えにくいため、日射で壁が温められると、浮き部は熱が下地へ逃げず表面温度が高くなります。健全部との間に生じるこの温度差を、サーモグラフィが捉えます。
つまり、この調査が見ているのはタイルそのものではなく、日射が作った温度差です。
裏を返せば、日射が足りなければ温度差も生まれず、浮きは画像に写りません。カメラの性能でも解析ソフトの精度でもなく、撮影時の日射条件が検出できるかどうかを決めています。ここを外した画像は、後からどんな処理をしても異常を取り戻せません。
国土交通省は2022年(令和4年)4月から、定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドラインを運用しています。このガイドラインでも、事前調査によって赤外線調査に適さない部分の有無を確認することが求められています。撮影時間帯の検討は、この事前調査の中身そのものです。
落とし穴1: 面ごとに最適時刻が違う
建物は一つでも、外壁は方位の違う複数の面でできています。そして日射が当たる時間帯は面ごとに違います。
| 面の向き | 日射を受ける時間帯の傾向 |
|---|---|
| 東面 | 午前。日の出直後から昼前まで |
| 南面 | 正午前後。ただし夏は太陽が高すぎて壁面への入射が浅くなる |
| 西面 | 午後から日没まで |
| 北面 | ほとんど当たらない。夏至前後の早朝・夕方にわずかに掠める程度 |
東面と西面では、最適時刻が半日ずれます。「午前中に現場入りして一周撮る」という段取りでは、西面は温まる前の状態で撮ることになります。
北面については、日射を受ける時間が極端に短いため、赤外線調査は著しく困難とされています。北面が調査範囲に含まれるなら、打診など別手法との併用を前提に計画を組む必要があります。
南面は「一番日が当たる面」というイメージがありますが、夏場の南面はむしろ条件が悪くなります。太陽高度が高くなりすぎ、鉛直な壁面への入射角が浅くなるためです。季節によって面の序列は入れ替わります。
落とし穴2: 隣の建物の影(都市部)
暦から求まる日の出・日の入りの時刻は、周囲に何もない平地での値です。実際の市街地では、隣接するビルの影が対象の壁面を覆います。
これが厄介なのは、影が壁面全体を一様に覆うのではなく、時間とともに壁面を横切っていくためです。
- 一部だけが影に入ると、その境界に日射由来の温度差が現れる。これは浮きによる温度差と見分けがつきにくく、誤診の原因になる
- 影に入っていた部分は温度が上がりきらないため、そもそも浮きが表面に現れない
- 結果として、「撮影はできたが判定に使えない」画像が量産される
日照時間だけを見ていると、この問題は見えません。必要なのは「その壁面のどこに、いつ、影がかかるか」という情報です。
落とし穴3: 山影(郊外・山間部)
山に囲まれた地域では、暦上の日の出よりずっと遅くまで日が当たりません。長野市の中心部でも、実測の稜線の高さは西で約8°、北で約6°、東で約3.4°あります。太陽がこの高さまで昇るまで、その方位からの直達日射はありません。
盆地や谷筋の現場では、午前の予定を組んでも実際には日が回っていない、ということが起こります。
従来のやり方の限界
これらを事前に把握しようとすると、従来は次のような方法しかありませんでした。
- 日の出・日の入り表を見る → 隣棟の影も山影も反映されない
- 経験と勘 → 初めての現場では効かない。担当者に属人化する
- 現地で朝から様子を見る → 半日から1日を失う。移動費もかかる
- とりあえず全部撮っておく → 使えない画像の解析に時間を取られ、結局撮り直しになる
いずれも、現地に行かないと分からないという前提から抜け出せていません。
出発前に決める: CRITIR Thermal Planner
CRITIR Thermal Planner は、この判断を事務所で済ませるための無料の Web ツールです。登録もインストールも不要で、ブラウザからそのまま使えます。
住所を入力して対象の建物をクリックすると、次が分かります。
- 面ごとの推奨撮影時間帯(東面は何時から何時、南面は何時から何時)
- 面ごとの推奨時刻(その面の日射が最大になる瞬間)
- 隣接建物の影が、いつ、壁面のどこにかかるか(3Dで時刻を送りながら確認できます)
- 地形(山影) を含めた実際の日照
建物の形状には国土交通省の3D都市モデル PLATEAU、地形には国土地理院の標高タイル(10mメッシュ) を使っています。整備されていない地域でも、国土地理院の建築物外周線や地形データで可能な範囲の計算に自動で切り替わり、何を計算に入れたかが画面と計画書に常時表示されます。
推奨時間帯の読み方
面ごとの帯が推奨時間帯です。その面が撮影に必要なだけ温まっている時間を表しています。
押さえておきたいのは、推奨時間帯は日射が途切れた後もしばらく続くということです。壁は日が当たった瞬間に温まるわけではなく、陰ってすぐ冷めるわけでもありません。直射を受けている最中は日射ムラが出やすいため、日が回りきった直後の余熱を狙うのは現場でも使われる手です。計画書に「推奨時間帯 15:45-19:05 / 日射 12:40-18:10」と、推奨時間帯の終わりが日射の終わりより後に出てくるのはこのためです。
推奨時間帯はその面の中での相対的な良し悪しを表します。帯の長さで面同士を比べることはできません。日射がもともと少ない北面にも帯は出ます。面の条件そのものを比べるときは「日射あり」の時間帯の長さを見てください。
撮影計画書をそのまま現場へ
計画書を出力を押すと、A4縦1ページの撮影計画書ができます。
- 対象建物の俯瞰図(周辺建物・面ラベル・方位・スケールバー付き)
- 推奨時刻の早い順に並んだ撮影スケジュール表
- 各面の推奨時刻における日射状態の面別ビュー
- 面別の推奨時間帯タイムライン
- QRコード(現場でスマートフォンから同じ3D画面を開ける)

計画書はそのまま作業指示書として使えます。URL に地点・日付・対象建物が入るので、リンクを共有するだけで相手の画面に同じ計画が再現されます。
Thermal Planner が扱うのは日射と影の幾何だけです。天候・気温・風速は考慮していません。曇りなら日射はありませんし、強風は対流でコントラストを下げます。当日の気象条件は別途ご確認ください。撮影当日の環境条件については 撮影 TIPS にまとめています。
撮影の後: 撮った画像をどう使うか
条件の整った時間帯に撮影できたら、次は解析と報告書です。CRITIR では、撮影した赤外線画像を変換なしでそのまま取り込み、以下を一貫して行えます。
- 温度測定・判定・所見の記録
- 壁面オルソ画像の自動生成(建物全体の劣化分布を1枚で俯瞰)
- 測定結果を反映した報告書(PDF / Word)の出力

撮影計画から報告書まで、同じ現場の情報が途切れずにつながります。
対応機種・機能・料金を含む CRITIR の詳細は CRITIR 製品ページ をご覧ください。
よくある質問
- 外壁の赤外線調査に最適な時間帯はいつですか?
- 一律の正解はなく、壁面の向きによって変わります。東面は午前、南面は正午前後、西面は午後が日射を受ける時間帯です。実務上は、その面が日射で十分に温まっている区間(日が当たっている最中、または日が回りきった直後の余熱が残っている間)を狙います。壁面の一部だけが影に入っている状態は、その境界が浮きと紛らわしい温度差になるため避けます。隣接建物や地形の影で実際に日が当たる時間は暦上の日照時間より短くなることが多いため、現地の状況を踏まえた事前確認が必要です。
- 北面の外壁は赤外線調査できますか?
- 北面は日射を受ける時間が他の方位に比べて極端に短いため、赤外線調査は著しく困難とされています。国土交通省のガイドラインでも、事前調査で赤外線調査に適さない部分の有無を確認することが求められています。北面が対象に含まれる場合は、打診など別の手法との併用を前提に計画してください。
- 曇りの日でも外壁の赤外線調査はできますか?
- 日射で壁を温めて浮き部との温度差を作る調査方法では、曇天は温度差が不足して検出できないことがあります。一方で日射ムラが出ないという利点もあるため、対象や手法によっては有効な場合もあります。いずれにせよ、当日の天候は撮影計画とは別に確認が必要です。
- 隣の建物の影は赤外線調査にどう影響しますか?
- 壁面の一部だけが影に入ると、その境界に日射由来の温度差が現れます。これは浮きによる温度差と紛らわしく、誤診の原因になります。また影に入っていた部分は温度が上がりきらないため、そもそも浮きが現れません。都市部では隣棟の影が実質的な撮影可能時間を大きく削るため、事前に把握しておく価値があります。
- 撮影時間帯を事前に調べる無料のツールはありますか?
- CRITIR Thermal Planner が無料・登録不要で使えます。住所を入力すると、3D都市モデル PLATEAU と国土地理院の標高データを使って建物の面ごとに日射と影をシミュレーションし、推奨撮影時間帯とA4 1ページの撮影計画書を出力します。日本国内が対象です。
まとめ
外壁赤外線調査で見ているのは、日射が作った温度差です。だからこそ、撮影時間帯を外した画像は後からどうにもなりません。
- 最適時刻は面ごとに違う。一周まとめて撮れる時間帯は存在しない
- 暦の日照時間は隣棟の影も山影も反映していない
- 判断を現地に持ち込むと、半日〜1日と再訪コストを失う
CRITIR Thermal Planner は、この判断を出発前に済ませるための無料ツールです。住所を入れて建物をクリックするだけで、面ごとの推奨時間帯と、そのまま現場に持ち込める撮影計画書が手に入ります。
撮影後の解析・報告書作成については ドキュメント をご覧ください。ご相談は お問い合わせフォーム からお気軽にどうぞ。
公開日: 2026年8月7日 / 最終更新日: 2026年8月7日

立面・壁面オルソ画像を簡単に作る方法 ─ CRITIRで建物壁面のオルソ画像を自動生成
ドローンや地上カメラで撮影した建物の外壁写真から立面・壁面オルソ画像を作成する仕組みと手順を分かりやすく解説します。RealityCapture(RealityScan)やMetashapeでは手間がかかる垂直面のオルソを、CRITIR(クリティア)なら簡単に自動生成。赤外線オルソにも対応し、外壁点検や劣化調査の資料作成を大幅に効率化します。

DJI赤外線画像は変換不要 ─ FLIR形式への変換不要で解析できるソフト「CRITIR」
DJI製ドローンで撮影したR-JPEGをFLIR形式に変換しなくても、そのまま高機能な温度解析・オルソ画像生成・報告書作成まで行えるソフトウェア「CRITIR(クリティア)」を紹介します。変換ツールや変換サービスにかかっていた時間・コストを削減できます。

ドローン写真から3Dモデルを自動生成 ─ CRITIRで温度付き赤外線3Dモデルを作る
ドローンや地上カメラで撮影した写真から、建物・構造物の3Dモデルを自動生成する仕組みと手順を解説します。CRITIR(クリティア)なら可視光3Dモデルに加え、温度を色付けした赤外線3Dモデルを生成でき、測定結果や報告書出力とも連動。複雑な形状の外壁点検・設備点検・太陽光パネル点検の資料作成を効率化します。
